意 見 書

「民営郵政事業への危惧骨格経営試算等をもとにして」

2005年7月12日

                  郵政事業研究会

                          郵政産業労働組合

                          全国労働組合総連合

はじめに

  私たちは、1996年から、学者、弁護士、労働組合共同で郵政事業のあり方について研究をしてきました。この数ヶ月間は、政府の郵政事業民営化法案について検討し、衆議院での審議につき注目をしてきました。しかしながら、これまでの国会の審議を通じて、何ゆえ郵政の民営化が必要であるのか、その根本のそもそも論のところで、十分に明らかにされなかったと感じています。小泉首相は「『民間でできることは民間で』とするのがなぜ悪いのかわからない」と答弁されています。しかし、現在の郵政事業は、民間でできないことを展開しています。多くの国民も、そのことを実感しているからこそ、民営化郵政事業の下では、多くの公共サービスが切り捨てられるのではないかと危惧しています。来るべき参議院の審議では、今一度、何ゆえに郵政民営化が必要であるのか、十分な審議を期待します。

本意見書は、そのような期待を表明しながら、以下、民営化の前提となる骨格経営試算等による経営問題に関して、入手しうる資料を前提に意見を提出いたします。

1.民営と分割による費用増

 (1) 郵政事業は、三事業分割(郵便・貯金・保険)で、それぞれが郵便局会社(窓口ネットワーク)に委託手数料を支払います。そして、郵便局会社に支払う手数料に消費税が新たに発生します。

民営化準備室の試算によると、初年度(2007年度)で、郵便貯金銀行411億円、郵便保険会社324億円と新たな国民負担となる(5/27郵政特委)とされます。この負担は、貯金、保険の維持に無視しえない影響をもたらします。

ところで、後にも指摘しますが、この消費税は5%とされています。仮に、消費税の増税がなされるとすると、経営に対するマイナス要因は更に大きくなります。政府は、2016年まで、消費税の利率上昇はないと確約されるのでしょうか。

(2)  郵便貯金銀行には、預金保険料、保険会社には、生命保険契約者保護機構負担金という負担増が実施されます。

   ちなみに、預金保険料と生命保険契約者保護機構負担金は、民間銀行、保険会社が自らの破綻にそなえ積立てている資金で、国庫ではなく民間金融業界の共同の積立金の金庫に入る資金です。現在、その積立金は、預金保険機構で、3.5兆円の欠損があります。民営化した郵便貯金銀行は、10年間で約9100億円の預金保険料を、国庫にではなく民間の積立金として支払うことになります。預金保険機構に資金が潤えば銀行の負担軽減となるのであり、国の財政に貢献するものではありません。

 (3) 3事業の分割がなければ消費税の負担はありません。公社であれば、消費税分は利益の一部として、後記する国庫納付金として納めることができます。

   また、公社は、危険負担分として預金保険料等の負担を負うのではなく、安心、安全な資金運用を旨とします。郵便貯金の運用は、利益を目的とした民間銀行とは異なる運用基準を採用して、利幅は低くとも安全・安心な運用を行うこととすることが可能なのです。それでも、一定の「保険料」が必要とされるとすると、安全・安心な運用を行うことを前提として、民間銀行とは違う基準で公的な基金を創出すればよいのです。

2.法人税より大きい国庫納付金

 

 (1) 公社は、民間企業に比べて税金等の負担が少なく、それは、「見えざる国民負担」であるとして、国民が、大きな負担をしているという論法がなされています。しかし、公社は、利益の半分(5割)を国庫納付することが決められています。法人税等の実効税率は約4割ですから、公社は、これより高い負担を国に対して行っていることになります。その額は、2016年でみると、民営化された場合、法人税等の負担で、計3245億円となるところ、公社としての国庫納付金等の負担は、3836億円相当となります。公社の方が600億円近く負担金は大きく、それだけ大きく国の財政に貢献することになります。

  

民営郵政事業の場合

法人税     1,713億円

租 税     1,532億円

計      3,245億円

公社の場合

国庫負担金   3,514億円

他の租税分     322億円

計      3,836億円 

(2) 預金保険料と生命保険契約者保護機構負担金は、国庫ではなく民間金融業界の共同の積立金の金庫に入る資金のことですから、そもそも「見えざる国民負担」といわれる対象ではありません。

(3) 結局、「見えざる国民負担」があって、公社は国民にとって負担が大きいという論法は成立しません。公社の方が国の財政に貢献するということが明らかになるのです。

3. 各社の問題点

(1) 郵便貯金銀行の赤字

     衆議院における審議で明らかになったなかで最も大きな問題点は、貯金銀行が政府の「骨格経営試算」でも、移行期間中2017年度までに赤字に転落する可能性があるということでした。

すなわち、郵便貯金銀行が負担する、新たな租税・預金保険料は、2007年で1571億円ですが、2016年度は1983億円の負担となります。この支出に対して、収益について、硬く見積もり、更に、郵政民営化準備室が作成している「採算性に関する試算」による2017年以降の試算で過去平均として採用されている、長短スプレッドを1.0%とみると、2016年度は、600億円の赤字となることが判明しています。

 

2016年度

収入   10,484億円

(長短スプレッド1.0%の場合)

費用   11,084億円

経常利益  ▲600億円

 

また、仮に、この10年間に、消費税が10%にまで増額されたとすると、2007年で411億円という消費税負担を比準して倍加してみると、2016年には365億円が新たに負担増となる試算がなされます。これを合わせると、2016年郵便貯金銀行は965億円という赤字を発生させることになります。

逆に、郵政公社のままならば、租税848億円、預金保険料1135億円、合計1983億円の費用支出がなく、長短スプレッド1%の場合でも、2016年度は、1383億円の黒字であることを竹中担当大臣は認めています。

郵便貯金銀行が赤字となる事態は、金融のユニバーサルサービス確保の見地からみても、避けなければなりません。

(2)各郵便局の赤字の実態

全国の郵便局は、単独で採算をみると赤字局が多いという実態が浮かび上がります。しかし、郵便局の採算は、全国一体のネットワークとしての価値で把握されなければなりません。また、全国一体のネットワークの確保は採算だけで検討されるべきではなく、国民に対する公共サービスとして、その価値が評価される必要があります。

郵便局の経営として、より実態に近いとされる収支相償方式によると、各郵便局は、総額で3611億円の赤字となることが公表されています。別紙にあるとおり、全国で90%以上の郵便局が赤字という道県が、18道県あります。北海道、沖縄県だけでなく、東北は、宮城県を除いた全県、九州は、福岡県を除いた全県が90%以上の郵便局が赤字です。山陰地方では、鳥取県はすべての郵便局が赤字であり、島根県はわずか4局しか黒字の郵便局はないという実体です。山口もあわせて、全県が90%以上の赤字となっています。

このような郵便局の赤字を負担すると、基金が1兆円あったとしても3年と持ちません。日本経済は、残念なことですが中央偏重で構成されています。地方の経済を守ろうとするためには、地域ごとの分断を行わずに、全国一律の経営を行い、更に、事業としても、採算事業と不採算事業とを一体とした、内部補助体制としての3事業一体経営が必要です。

(3) 社会・地域貢献基金

  郵政公社は三事業一体で経営をおこない赤字局を黒字局の収益で補うことによって、全国一律サービスが成り立っています。ところが、民営・分社化すれば、赤字の郵便局を維持することができなくなることが当然予想されます。政府も、そのことを前提としているからこそ、法案で「社会・地域貢献基金」を創設するとしています。基金という民間ではありえない枠組みを設定すること自体、郵便局が通常の経営では成たたないことを認めるものです。

現在、公社は、盲人用の点字郵便など第四種郵便物は無料制度を行っています。また、天災や非常災害時の郵便はがきなどの無償交付や、救済用の郵便物の料金免除を実施しています。こうした社会貢献事業の維持を目的とした基金が社会貢献基金で120億円、郵便貯金や簡易保険の金融サービスを確保する地域貢献事業のために設けるのが地域貢献基金で60億円、それを、原資1兆円を過去10年間の国債利回りの平均である1.8%で運用し、年間180億円の運用益で対応するとしています。

しかし、この間の国会討論で、政府は郵便貯金銀行による自社株買いも、「完全処分」の一形態として認めるといいだしました。つまり、日本郵政株式会社は、郵便貯金銀行の株式を市場に完全に売却するのではなく、郵便貯金銀行に譲渡することも、株式の「処分」として認めています。市場に売却されることのないこの株式は、移行期間が終了した2017年4月には、再び日本郵政株式会社に譲渡されます。これでは、基金の原資1兆円が確保されるかどうか、不安といわなければなりません。

また、基金が想定している補てん額は、一局あたり600万円、2000局にすぎません。実際の赤字局は、1万1000局以上、平均赤字額も1000万円を超えています。また、現在、公社は、第三種郵便・第四種郵便物で261億円の費用負担(単年度赤字は平成16年度決算、第三種▲236億円、第四種▲25億円)を行っています。更に、郵便貯金銀行は600億円(2016年度)の赤字になることが政府の試算でも明らかになっています。

このような実態で全国の郵便局網を維持するためには、基金という外部補助体制ではなく、3事業一体経営という内部補助体制こそが維持されるべきであると考えます。

(4)郵便事業の合理化の問題点

私たちの研究会では、現在の公社について、とにかく黒字をだすために、無理な効率化が強行されているのではないかと危惧しています。そもそも、現在の公社は、長い間、設備投資は、国の信用を背景としての借入金に依存してきました。その結果、民間の運輸企業、金融機関に比べて、過少資本、借入金依存体質が定着しています。そのような事業体質はある程度の時間をかけて構造的に改革が実施されなければなりません。公社にはそのことが期待されていたとみています。ところが、民営化論議を背景として、現在の公社は、長期的な構造改革ではなく、短期的な利益、効率化に重点がおかれています。その結果、山崎清郵政産業労働組合委員長が参考人として意見陳述したように次のような無理が現場で発生しています。

    ・1万7000人の人員削減

  ・誤配達の苦情26万5809件(13%増)

  ・苦情43万7665件(6%増)

  ・3ヶ月のサービス残業5万7000人、未払い残業料32億円

  このような現場のあり方に、十分な検討がなされないまま、新しいコンピュターシステムが導入され、万が一事故が発生したとすると、現場で発生する混乱は計りしえないものとなることが危惧されるのです。

  少なくとも、郵便事業について、無理な効率化が実行されて、JR西日本のような事故がおきるような状態がおきていないかどうか、骨格経営試算の前提事情として十分な検証を心から望みます。

 

4.新規業務の問題

 

民営化準備室作成の「採算性に関する試算」は、各社の新規業務を列記しています。その数値事態は控えめに算出されているとみられます。しかし、その業務内容には重大な疑念がもたれ、逆に民業圧迫という懸念さえ持たざるをえません。

(1) 殆どがリスク商品

  新規業務として、株式、投資信託の販売がなされるとしていますが、それらは、専門企業である証券会社が展開していても、顧客からのクレームが多く、数多くの事案が裁判として争われています。ノウハウを蓄積し、加えて、弊害のない販売方法を確立できるのか、重大な問題です。

変額保険は全国で膨大な数の訴訟が行われて、判決においても商品自体の危険性が指摘されています。変額保険が社会問題化したのは、生命保険会社と銀行が提携して、銀行の顧客について、銀行の顧客情報と信用が利用されて、高額でリスク多い商品が従来の生命保険の枠を超えて、展開されたことにあります。郵便局が、公的機関として保有してきた顧客情報と信用が変額保険に利用されることに重大な懸念を感じます。

これらリスク商品はいずれも元本割れの危険性を持ち、余裕資金のある資産家に適合するものです。また、顧客自身にも、リスク商品を扱う覚悟と経験が求められています。郵便貯金利用者は全体としては、小口資金で、安心安定貯蓄を信頼してきています。その郵便貯金利用者を対象にして、リスク商品販売を大規模に行おうとする、結局、従来の小口客をリスクの犠牲にすることになると考えられます。

(2) 問題のある住宅リフォーム

窓口会社の新規業務として、住宅リフォーム仲介があげられています。そこには、手数料9億円が算出されています。しかし、住宅リフォームが社会問題となっているのは周知のとおりです。新聞報道をみると、郵便貯金の利用者と重なるお年寄りの皆さんが、ターゲットにされています。工事の仲介で重要なことは、責任ある工事の施工をする業者を確保し、育成することです。そのためにも長い期間が必要とされます。民営化されて、利益優先の事業体となった窓口会社が、専門知識のない事業に進出して、短期間で営業展開する際に、見えないところで欠陥リフォームがなされないという保証はありません。

(3) 35兆円貸し付け業務

新規業務として行う35兆円という貸付金額は、次のとおり、メガバンク1行の貸付け総額と同様であり、第2地銀全体の貸付け総額にほぼ相当しています。これは、貸付について、もう一つ、メガバンクが設立されるということを意味しています。第2地銀と比べてみると、そっくり、交代させられることになりかねない規模を有しています。

当然、貸出競争の激化をもたらすと見られます。また、大企業は現在資金余剰の状態にあり、実際は、中堅・中小企業の優良貸出先を巡る競争をいっそう強めることになります。それは一方で、地域の中小企業金融機関の経営を圧迫し、結局のところ、地域金融機関に依拠する地域経済をも不安定にすることに連動します。

今、金融行政として求められることは、新たに35兆円という融資資金を投入して融資合戦という競争を助長することではありません。今以上の競争の激化は、経営の苦しい小規模企業への金利引き上げをいっそう強め、また、より高金利による高収益を求めて、今日進んでいる銀行のサラ金化をさらに進める形で、民間金融をも大きくゆがめる結果をもたらすものです。

  

みずほ銀行

貸付金残額  370014億円

東京三菱銀行

348166億円

UFJ銀行

378763億円

三井住友銀行

508101億円

地方銀行

1353253億円

2地方銀行計

419254億円

 

 

 (4) 新規業務に取り組めない郵便局

「採算性に関する試算」によると、新規業務を担う郵便局は、集配局4800局、普通局1300局とされています。この計画によると、その他、15447局76%の郵便局は、新規事業の対象外であることがわかります。確かに、現在の郵便局の大半では、株式、変額保険の商品を販売するという人的余裕はありません。事業活動として社を上げて新規業務による利益追求がなされる結果、そのような利益追求活動のなしえない郵便局が荷物とみなされて統廃合の対象となる、そのことは、これまでの民間銀行の実態をみれば明らかです。

  郵便局のネットワークを維持するために必要なことは、利益活動追及という基準を立てることではなく、国民のネットワークを維持するという公的サービスの確保を守るという基準がたてられることが必要です。

 

5.金融のユニバーサルサービスの位置付け

 

(1) 金融のユニバーサルサービスの崩壊

  身近な金融機関は、通信とともにいまや生活にとって不可欠な存在になっています。郵政事業は、この通信と金融のユニバーサルサービスを、公共事業として維持させてきました。ところが、この間、民間の金融機関は、ユニバーサルサービスの確保とは、かけ離れた合理化を進行させています。

すなわち、民間金融機関は、98年から04年の6年間で民間金融機関(農漁協含む)を7601店舗減らしています。また、民間金融機関では、ATM引出し手数料、通帳再発行の有料化から口座維持手数料の徴収と、ネットワーク維持の有料化の本格導入がすすんでいいます。

金融の再編が進んで、規模の大きさをきそう金融機関が登場していますが、いわゆるメガバンクの店舗は支店、営業所を含めて、次のような総数しかありません。

みずほ銀行

572店舗

東京三菱銀行

283店舗

UFJ銀行

472店舗

三井住友銀行

461店舗

1,783店舗

 

  金融のユニバーサルサービスを、20247の郵便局数の10分の1にも満たないメガバンクに委ねることはできません。全国の地方銀行、信用金庫、信用組合と、農協、漁協の金融に合わせて、郵便局の金融網とを活用して、この国の金融のユニバーサルサービスを維持する、そのような国の基本方針を確立することが必要です。

 このような基本方針と制度的な保証がなされないとすると、赤字経営が危惧される貯金会社が、小額預金の貯金窓口をコスト削減のために閉鎖する、そのことを止めることはできません。

(2) 郵便局の金融ネットワーク

  郵便局のネットワークでは、一日あたり7330万通配達の郵便事業、全世帯の85.7%が加入する郵便貯金事業、61.2%が加入する簡易保険事業が営まれ、公共料金の支払いや年金の受け取りなどを含めて、一日あたり630万人が郵便局を利用しています。

障害者に対するバリアフリーも、郵便局では先進的に実施しています。ATMは、@視覚障害者用の音声誘導A点字表示B差込イヤホンの配備が、郵便局26,123台(03年3月)で全局対応をしています。これに対して、都銀5行では、ATM総数23,800台のうち障害者対応は、3,460台で約15%、地銀では36,700台中4,300台で約15%、第二地銀では12,400台のうち1,100台で8%の対応という状況です。これら、民間の金融機関のすべてを合計しても8,860台となり、郵便局の総数の34%に過ぎない実態になっています。

このような郵便局の金融ネットワークは、郵便貯金事業の目的が利潤追求ではなく法第一条に「公共の福祉の増進」と明記されていたからこそ確立されてきたのです。

(3) 金融のユニバーサルサービスの確保という位置付けは不可欠

今、政府に問われているのは、金融のユニバーサルサービスを維持しようとするかどうかです。ところが、竹中郵政民営化担当大臣は、「金融について、これをユニバーサルサービスの義務として義務付けることはしない。」(第7回特別委員会)と明言しています。さらに小泉首相は、6月4日の郵政特別委員会で、「(郵貯、簡保というインフラ整備への中央政府の責務について)残しません。完全民営化をするのだから、民間会社が行います。」という答弁をしています。今回の郵政民営化が、金融のユニバーサルサービスを放棄することにあることが国会審議を通じて明らかになってきました。まさに、このことこそが大きな争点であると考えます。

私たちは、金融のユニバーサルサービスの確保は国の責任であると理解しています。このことをまず明確にすること、そして、そのためには、ユニバーサルサービスを確保するための制度的保証として3事業一体の経営の維持を求めます。郵便貯金会社が赤字となるような民営・分割はなされるべきではありません。

  参議院では、この金融のユニバーサルサービスについて、国民生活にとって如何に不可欠なものであるか、その維持のための制度のありかた、そして、民営・分割体制では、企業経営の問題としてユニバーサルサービスのネットワークが寸断されざるを得ないこと、それらのことを多面的に明らかにしていただくことを要望します。

 

6.諸外国の結果が示すもの

 

1)海外調査活動の結論

私たち研究会では、これまで、ニュージーランド、ドイツ、フランス、イギリスの郵政事業の調査にでかけました。当時礼賛されていたニュージーランドの民営化が、弱者切捨てと国の基幹産業の海外売却であることをいち早くつかみ、明らかにしてきました。ドイツでは、廃止された郵便局と復活された郵便局を調査しました。イギリスでは、コンビニ化した郵便局が売りに出されていることをしりました。公的事業として維持されているフランスでは、アルプスの山の中で、村人たちに愛される郵便局と公務員の局長さんに出会ってきました。私たちが調査した世界の状況は、通信と金融のユニバーサルサービスを国の隅々で維持しようとする限り、公共事業として郵政事業を営むしかないということでした。そのために、一定の公的負担は止むをえないことなのです。逆にいうと民営化とは、このユニバーサルサービスの責任を放棄することの表明であるということでした。

(2) スウェーデンの郵便事情

そして、この5月に、「スウェーデンのポストバンクは、ノリアルバンクという、実は破綻しつつあった民間のところに譲渡されました。ノリアルバンクは商業銀行ですから、どんどん郵便局と取引をしなくなって、郵便局でなく、独自のネットワークをつくるようになり、結局、郵便局のネットワークが3分の2閉鎖されるということになった。ここで大切なことは、フィンランドの人たち、そしてスウェーデンの人たち、特に地方に住んでいる人たちが大きな打撃を受けたということです。例えば、年金を受け取るのに郵便局を使っていた人たちは、今、全く金融サービスにあたるものを受けれないでいる。フィンランド、あるいはスウェーデンの国民は、郵便局も利用できない人が多くなってしまった。」(マーク・J・シャー元国連上席調査研究員)とされるスェーデンを訪問してきました。

ストックホルムでは、通信のユニバーサルサービスを確保するべく規模の大きい集配局は維持されていました。しかし、市民が日常利用する金融機関の窓口となる郵便局は見事にみつかりませんでした。地元スェーデンの新聞が、「スウェーデン全国で、本来国民へのサービスとして国が担当していた郵便局の民営化により、合理化と利益追求を理由に、全国各地の郵便局支店の閉鎖が続いている。」「支店を閉鎖された地域に住む高齢者、身体障害者たちは、郵便局支店のある次の町まで、バスや電車で行かなくてはならない。数年前までは、スウェーデンの公共サービスは素晴らしいと国民から好評であった。これらのシステムは現在では昔話となっている。」と報道している実態を垣間見ることになりました。

(3) 規制緩和・民営化から再び公共事業の復活へ

  このような中で、世界では、郵政の事業を公共事業として復活させようという動きが顕著となってきました。郵政民営化の強行は既に半周遅れのランナーとなっています

ニュージーランドでは、郵便貯金は、民営化されてオーストラリアの銀行に売却されました。しかし、一昨年、ニュージーランドポストのもとにキウイバンクの名前で国営金融機関の復活が行われました。ドイツでは、郵便事業の完全自由化を見送り、99年ドイツポストがポストバンクを買収・再統合しました。フランスでは昨年、国営の保険事業をスタートさせています。

イギリスは、2002年3月、ロイヤル・メールが赤字克服と利益向上を理由に全国9000局のうち都市部の3000局の閉鎖と合計4万人の人員削減を含む3カ年計画を出し、昨年11月1400以上の郵便局と35000人の職員が削減されました。しかし、郵便料金体系や新規参入の完全自由化は2007年まで延期し、ロイヤル・メールは度やめた金融事業に再参入を決め昨年から民間銀行と提携しています。

アメリカは2003年7月31日大統領の郵政公社諮問委員会で報告書をまとめ「ユニバーサル維持は国営でしかできない」と、公社のままで全国一律サービスを維持する方針を決定しています。

   私たちが定期的に交流しているILOは、「、郵政改革は必要であるとしても、郵政の民営化は、不可欠な方法ではない」と明言しています。国会において、郵政民営化を絶対視することなく、功罪含めて総合的に検討することが強く求められています。

 

7.この国の民主主義の問題として

 

衆議院での採決について、政党における民主主義の問題が論じられています。私たちは、そのことに併せて、今、この国の民主主義が問われていると考えています。

(1) 郵政民営化に関する特別委員会議録第2号は、冒頭に郵政民営化に反対すること、慎重審議を望むことという請願が列記されています。4月13日から5月18日まで総務委員会に付託された請願が13件、3月4日から4月15日まで総務委員会に送付された陳情書が244件、そして、地方議会で採択された意見書が実に575件記載されています。これらの膨大な請願、陳情、意見書の内容はどのように特別委員会で審議され、与党修正意見に反映されたのでしょうか。

私たちの知る範囲では、全国で2616の地方自治体で郵政民営化に反対するか、慎重審議を求める意見書が採択されています。それは全国自治体の8割にあたると聞いています。また、都道府県段階では、小泉首相の選挙区がある神奈川県を含めてすべての都道府県で意見書が採択されています。国会は、このような全国の意見に答えたのでしょうか。

(2) 特別委員会の審議の記録をみていますと、議論が、与党の修正意見の内容に収斂していたとは思えません。国会での審議がどのように反映されて、政府案が修正されたのか、そして、修正案がどのように、それまでの特別委員会で提起された疑問に答えているのか、採決以前の審議上の問題として論議され、そのことはどのように国民の前に明らかにされたのでしょうか。更に、「修正しません」と、国民の前で言明しつづけてきた小泉首相の態度が一夜にして変更されました。国民は首相の言動に信頼を置けるのでしょうか。

(3) 加えて、最も重要なことは、衆議院本会議での採決についてです。国民周知の事実として、自民党の議員の皆さんには党議拘束という縛りがかけられ、厳正な処分が事前告知をされ、衆議院の解散と公認拒否がいわれ、与党内での選挙協力の拒否が言われました。そして、結果は、5票差の可決でした。逆にいうと、このような大規模な拘束がなされなく、衆議院議員個人の自由な意見と判断にもとづいて採決がなされたとすると、間違いなく郵政民営化関連法案は否決されたということになるのです。

(4) 特別委員会での審議内容、国会に対する請願、陳情の状況、そして地方議会における意見書採択の実情、更に、国会議員の意見の分布、それらはいずれも郵政民営化法案に根本的な問題があることを指し示しています。このような状況下で、今求められるのは、国会内で、何よりも民主主義が保証されて自由な言論が交換されて議員一人一人の自由な判断が尊重されることです。そのことは国会の民主主義回復だけではなく、この国の民主主義にとっても根幹となる重要性があることだと考えます。


2007年骨格経営試算(単位億円)

 

便

 貯 1.3%)

      険 

 

収益      18,642

   16,598

死差   6,588

収入   18,657

郵便       18,615

運用収益   19,969

調達費用   4,430

 

郵便    3,258

貯金    8,219

保険    6,489

 

 

利差 △12,566

 

    17,890

用     12,783

差  2,952 

   15,257

人件費    10,337

物件費     4,251

租税        172

委託料     3,258

人件費        684 

物件費      1,767

租税         953

委託料      8,219

預保料        618

人件費     377 

物件費     770 

租税      470 

委託料  6,489

保護機構負担金  10

人件費  12,024

物件費   3,092

租税       141

 

 

三利源小計 3,026

 

経常利益  636

経常利益    3,815 

経常利益      793 

経常利益   3,400

 

2016年の骨格経営試算(単位億円)

  便 

1.3%)

 

 

収益  16,357

収益   13,555 

死差  4,055

収入 14,962

郵便  16,330 

運用収益 13,074

調達費用   577

 

郵便 2,858

貯金 6,110

保険 5,303

 

 

 △3,277

 

用  16,107

用  11,084

  420

用  13,825

人件費  9,358

物件費  3,848

租税   172

委託料  2,858 

人件費   684

物件費  1,767

租税      848 

委託料  6,110

預保料  1,135

人件費   377

物件費   770

租税   371

委託料 5,303

保護負担金79

人件費  10,885

物件費   2,799

租税     141

 

 

三利源小計 358

 

経常利益  173

経常利益 2,471

経常利益  2,754

経常利益  1,137

                        

公社決算(単位億円)

 

郵便業務

郵便貯金業務

簡易生命保険業務

15年度

16年度

15年度

16年度

15年度

16年度

経常収益

19,722

19,330

58,714

40,989

168,577

146,650

経常費用

19,267

19,099

36,006

28,754

166,252

140,317

経常利益

455

230 

22,707

12,235

2,325

6,333

 

 

 都道府県別損益の試算

 

局数

黒字局

赤字局()

金額(億円)

 

局数

黒字局

赤字局()

金額

(億円)

北海道

1,226

64

1162(94.8)

426

滋賀県

229

78

151(65.9)

青森県

267

   18

249(93.3)

68

京都府

 442

  168

274(62.0)

11

岩手県

308

13

295(95.3)      

86

大阪府

1095 

593

502(45.8)

234

秋田県

273

4

269(98.5)

96

兵庫県

840

331

 509(60.6)

31

山形県

589

16

273(94.5)

 ▲72

奈良県

241

  107

134(55.6) 

37

宮城県

365

50

315(86.3)

32

和歌山県

263

72

191(72.6)

   41

福島県

435

41

394(90.6)

102

鳥取県

147

0

147(100.0)

42  

茨城県

465

 163 

302(64.9)

15

岡山県

419

95

324(77.3

15

栃木県

311

127

     184(59.2)

7

島根県

257

4

253(98.4)

88

群馬県

302

124

178(58.9)

7 

広島県

584

86

498(85.3)

94

埼玉県

624

497

127(20.4)

   309

山口県

354

35

319(90.1)

79

干葉県

693

362

     33147.8

90

香川県

189

80

109(57.7)

8

東京都

1,514

586

928(61.3)

635

徳島県

203

51

152(74.8)

30

神奈川県

754

535

219(29.0)

356

愛媛県

317

59

258(81.4)

53 

山梨県

201

44

157(78.1)

9

高知県

229

16

     213(93.0

65

新潟県

536

    40

496(92.5)

80

福岡県

714

 153

561(78.6)

60

長野県

445

67

378(84.9)

66

佐賀県

166

16

150(90.4)

20

富山県

212

43

169(79.7)

21

大分県

308

19

289(93.8)

85

石川県

254

48

      206(81.1

32

熊本県

392

16

     376(95.9

84

福井県

211

38

173(82.0)

 

22

長崎県

311

22

289(92.9)

83

静岡県

487

253

234(48.0)

75

宮崎県

196

9

187(95.4)

52

愛知県

837

650

     18722.3

286

鹿児島県

437

20

417(95.4)

152

岐阜県

353

145

   20858.9

5

沖縄県

180

14

166(92.2)

33

三重県

 372

120

      252(67.7

3

合計

20,247

6,092

14,155(69.9)

 

 

 

支社別の損益試算(三事業合計)

支社名

局数

黒字局

赤字局()

金額(億円)

支社名

局数

黒字局

赤字局()

金額(億円)

北海道支社

1,226

64

1,162(94.8)

426

東海支社

2,049

1,168

   88143.0

364

東北支社

1,937

142

1,795(92.7)

457

近畿支社

3,110 

1,349

 1,76156.6

252

関東支社

2,395

1273

1,122(46.8)

383   

中国支社

1,761

220

 1,54187.5

288

南関東支社

955 

579

376(39.4)

347    

四国支社

938

206

   732(78.0)

140

東京支社

1514 4 

586

928(61.3)

 635

九州支社

2,524

255

2,269(89.9)

417

信越支社

981

107

874(89.1)

146

沖縄支社

180

14

166(92.2)

33

北陸支社

677

129

548(80.9)

74

合 計

20,247

6,092

14,155(69.9)

3,611

 

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